ミクトのすぐ近く、新湊の町では、十月一日に「新湊曳山まつり」が行われました。
放生津八幡宮の秋季例祭として知られるこのお祭りは、
昼は絢爛豪華な「花山」、夜は幻想的な「提灯山」と、
一日で二つの表情を見せてくれます。

十三基の曳山が連なる光景は、まるで時代絵巻のよう。
すぐそばを通り抜けると、軋む車輪の音や掛け声が胸に響き、
夕暮れには提灯の灯りが水面に映り、港町ならではの情景が広がります。
ミクトのあるこの町の日常のすぐ隣に、
こんなにも息づいた伝統があることを、改めて誇らしく感じます。
お客様のお話によると、このお祭りの準備は何週間も前から始まるそうです。
町の人々が力を合わせ、ひとつの行事を守り続けていく姿に、
“この場所で珈琲を淹れる”という日常の尊さを思わず重ねてしまいました。
そして十月四日。
静けさが戻った通りを抜けて、ミクトでは今日も“楽しいコーヒーの時間”のはじまりです。
本日は、新しく参加された生徒さんお一人をお迎えしての教室でした。
まずは二種類の豆をカッピング。
「インドネシア アチェ ゲガラン」と「ケニア スングリ」。
今回は満場一致で、アチェに決まりました。

すると生徒さんのお一人が、
「実はアチェの珈琲農園に行ったことがあるんです」とお話してくださいました。
思わず「えっ、そんなに珈琲が好きで?」と尋ねると、
「サーフィンをしに、その時は珈琲には興味がなかったんです」とのこと。
三度も通ったそうですが、
「もう行きたくない」と笑いながら語るその理由は、
女性には少し厳しい土地柄だったからだそうです。
遠い旅の思い出が、思いがけず一杯の珈琲を通じて蘇りました。
その後は、それぞれの抽出を見ながら、
「粉の粗さを変えてみましょう」「粉量を少し増やしてみましょう」
「蒸らしの仕方を意識して」など、ひとつずつ調整を重ねました。
同じ豆でも、抽出のわずかな違いで味わいが変化していく瞬間。
皆さんの表情が真剣で、そしてどこか楽しげでもあります。
教室のあと、生徒さんのお一人からご相談がありました。
近いうちにお店のオープンに関わるとのこと。
焙煎、仕入れ、メニュー、接客、価格設定……
ひとつひとつの選択に迷いながらも、
しっかりと前に進もうとする姿に胸を打たれました。
珈琲教室で学んでお家で抽出することと、お店で珈琲をお客様に提供することは、
似ているようでいてまったく違います。
それでも、どちらにも共通しているのは「まっすぐに珈琲と向き合うこと」。
小さな一歩の積み重ねが、きっと確かな形になるはずです。
迷うとき、立ち止まるとき、
その道しるべをそっと照らせるような存在でありたいと思います。
