長月廿日|ハンドドリップ体験

雨が降ったりやんだりの朝。
空を見上げると、つばめたちの姿が少しずつ減ってきました。
季節は「玄鳥去(つばめさる)」──
夏をともにした渡り鳥たちが、
静かに南の空へ帰っていく頃です。

羽音が遠ざかるたび、
どこか胸の奥にひとしずくの寂しさが落ちます。
けれどそのあとを追うように、
ひんやりとした風が頬をかすめ、
秋の気配をそっと運んできました。

本日の教室は、同級生の女性4人組。
「ご近所のお友だちですか?」と尋ねると、
「仲良しかどうかはわからないけれど、何かするときは4人で集まるんです」
と、楽しそうに笑って答えてくださいました。

「今日はどうして参加されたんですか?」と伺うと、
「少しでも美味しいコーヒーが飲みたくて」とのこと。
体験クラスなのでどこまで上手くなるかは分かりませんが、
「今日はアドバイス多めでいきますね」とお伝えしました。
4人とも普段からドリップをしているそうで、こちらも楽しみです。

まずは2種類の豆のカッピングから。
インドネシア・アチェ・ゲガランと、ケニア・スングリをご用意しました。
フルーティー派と苦味派に分かれましたが、
多数決でケニアに決定。

それぞれに、いつものやり方でドリップをしていただきます。
1分ほどでさらりと淹れる方、
中心からゆっくりと注ぎ始める方、
思い切りよく注ぐ方、
何度も分けてじっくりと抽出する方──
4人4通りのコーヒーが並びました。

そして、いよいよテイスティング。
ひと口飲んでは「ぜんぜん味が違う!」
「こんなにおいしくなるんですね」と
感心の声が重なり、
テーブルの上が静かに熱を帯びていきます。

一番おいしかったのは、
時間をかけすぎてフィルターが少し詰まり、
普通なら「失敗かな?」と思うような抽出でした。
ところがその一杯が、風味が際立ち甘い余韻もあります。

兼好法師が『徒然草』で、
「下手な絵こそ面白きものなり。
上手はただ真似ぶるばかりにて、心なきなり。」
見た目が少し不格好でも、
そこにしかない味わいが生まれる。
今日の一杯は、そんな気づきを
静かにそっと、胸の奥に置いていってくれました。

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