8月16日 送り盆の日の体験コーヒー教室
迎え火の余韻を残したまま、静かに今日を迎えました。
富山県では13日の夜、「おしょうらい(御精霊)」と呼ばれる小さな灯火に導かれて先祖の魂は家々へ戻ります。
今宵はその送りのとき──。高岡店の近くを流れる内川は、お盆休み期間の人々できっと、にぎわい、陽光が水面を照らし揺らめきに街が包まれていることでしょう。
一方、少し離れたミクトの店先には、穏やかな朝の空気が漂っていました。
その静けさは、これから始まるコーヒーの学びの時間に、柔らかな幕を開けるかのよう。

第3土曜日の体験コーヒー教室
今月の教室に集ったのは、お二人の生徒さん。
東京から訪れた、まだドリップの経験のない生徒さんと、
ご近所にお住まいで、ときおりハンドドリップを楽しまれている生徒さん。
二人並んだ姿は、どこか旅の途中のようにも見えて、教室そのものが小さな物語の舞台となっていました。
2種類のコーヒー豆から本日使用する珈琲を選んでいただきます。
- 浅煎り:ルワンダ シンビ
- 深煎り:グァテマラ ウエウエテナンゴ
香りを確かめるために鼻を近づけたその瞬間、
お二人の表情がほんのりと明るさを帯びました。
小さな声に宿る驚き
「え……おいしい。」
「深煎りなのに、……。」
声は控えめながら、その響きには驚きとよろこびがそっと滲んでいました。
言葉は穏やかに交わされながらも、まるでコーヒーの新しい扉が静かに開いていくようで、
その瞬間、教室全体が柔らかな香りに包まれ、時間の流れまでもゆるやかになったかのようでした。
夏のひとこま
静かに笑みを浮かべながら帰っていかれるお二人を見送り、心に残ったのは、やさしい余韻。
それは送り盆の夜空に揺れる灯火のように、淡くも確かな光となって、教室を照らしていました。
美味しいコーヒーがひとつのきっかけとなり、また新しい夏の思い出が生まれた一日でした。
「灯火があるかぎり、道に迷うことはない。」─ 精霊の守り人より