昨日、ドイツからの長い旅を終え、
ようやくこの場所にやってきたプロバットP12。
受注生産で作られたこの一台が、
ついに高岡は姫野の地に腰を落ち着けたのだと思うと、
秋の朝の光が胸に差し込むような、
しずかなあたたかさが広がります。

朝十時、昨日遅くまで設置をしてくださったお二人が再び訪れました。
全国を忙しく飛び回り、東京のご自宅には月に数日しか戻れないのだとか。
そんなお二人が、焙煎機の扱い方を一つひとつ丁寧に教えてくださいます。
ベアリングへの注油や各部の掃除、部品の外し方、
煙突やファンの手入れ、チャフの捨て方……
手を動かすたび、焙煎機と少しずつ呼吸が合っていくようでした。


そして、いよいよ馴らし焙煎。
操作パネルを前に、新人さんが説明をしながら焙煎を進めます。
横で先輩がさりげなく補足を入れる姿が頼もしく、
どこかミクトの新人スタッフを思い出して、
心の奥でそっと「がんばれ」と声をかけたくなります。

二回目は指示を受けながら、三回目はひとりで火を入れました。
三回分の豆は破棄になったけれど、
立ちのぼる香りとドラムの響きは、
確かにこの場所の空気を変えていました。
「何か質問はありますか」と尋ねられたとき、
言葉は浮かばないものです。
──これから、どうぞミクトの豆をたくさん焙煎してください──
慣れ親しんだ道具を離れることは、
どこか心細さも伴います。
けれど、新しい道具と向き合うことで
次の一歩や、新しい味わいに出会えるのだと思います。
かつて宮中の栄華を知る建礼門院が、
壇ノ浦ののちに静かに大原へ下り、
新しい祈りの日々を受け入れたように──
ここからまた、新しい物語と出会いの日々が始まります。
秋風にのって立ちのぼる煙と香りが、
街のどこかで誰かの一日をやさしく彩りますように。
