珈琲教室の進め方を学ぶ

スタッフ研修─20250811

開店前の静かな店内に、カップがそっと触れ合う澄んだ音が響きます。 そこへお湯がやわらかく注がれる音が重なり、朝の空気に心地よい調べが広がっていきます。

この日のその音は、お客様を迎えるためではなく、スタッフ同士が向き合い、学び合うための合図でした。 テーマは──「珈琲教室の進め方」。


大切にしていること

教室を進めるうえで、大切にしていることがいくつかあります。ひとつは、 「ただ参加してもらうだけでは足りない」ということ。心が動き、夢中になってこそ、 その時間は特別な学びになると考えています。

本来なら、生徒一人ひとりの表情やしぐさを丁寧に見て、必要な言葉を添えるのが理想。 けれど、講師が夢中になりすぎて周りが見えなくなることもあります。 そんな時は、生徒さん同士が自然にフォローしてくれます。 新しい方にやさしく声をかけたり、「先生、それ違いますよ〜」と笑顔で訂正してくれたり。 そのやり取りで場が和み、教室全体が見えない糸でやさしく結ばれていくように感じます。

“Why-dunit”という合言葉

ふたつ目は、富山新聞文化センター東教室担当者さんからいただいた教え── 新しく参加された方には、必ずお聞きすること。 「なぜ、この教室に来られたのですか? 何を知りたいのですか?」

個人的には、この質問を“Why-dunit”と呼んでいます。 本来は推理小説で「なぜ犯行に及んだのか」を探るジャンルの言葉ですが、 もちろん珈琲教室に犯罪の香りはまったくありません。 ただ、この質問で動機がはっきりすると、授業の組み立てがぐっとしやすくなります。

たとえば「おいしいアイスコーヒーを家で淹れたい」「カフェ開業のために練習したい」 「ただ涼みに来ただけ」──理由は本当にさまざまです。 中には「先生に会ってみたくて」という、少し照れくさい 動機はありませんが。 そんなやり取りから、教室全体の空気がやわらかくなることも少なくありません。

試行錯誤が育ててくれたもの

こうした大切なポイントに気づくまでには、たくさんの試行錯誤がありました。 成功の瞬間よりも、むしろ失敗のほうが鮮やかに記憶に残るものです。 かつて製菓学校で講師をしていた頃、初めての授業で感じた緊張と戸惑いは今も覚えています。 一年目は思うようにいかず、工夫を重ねる毎日。三年目にしてようやく、 納得できる形にたどり着きました。──そのお話は、また別の機会にお話しとうございます。

知識を“伝わる”に変える

そして、教室の流れや風味の表現。知識を持っているだけではなく、それをどう伝えるか。 一杯の珈琲に込めた物語を、自然に、そしてあたたかく手渡せるように心がけています。

この日は、生徒役と講師役に分かれて、何度も練習を重ねました。 豆の香りをどう表すか。お湯の温度や注ぐ速度を、どうすれば伝わりやすいか。 「言葉の選び方」や「間の取り方」──そのすべてが、やがて珈琲の味に映し出されます。

この日の学びは、きっと8月の富山ダイハツグランジュエル今泉店での珈琲体験教室で、 お客様の心に、小さな笑顔と温もりをそっと灯すことでしょう。


You see, but you do not observe.
「君は“見ている”が、“観察してはいない”。」
─『シャーロック・ホームズ』(短編 ボヘミアの醜聞 より)

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