神無月拾日|中級珈琲教室

露が冷たくなり、秋の深まりを感じる頃。
草の上に並ぶ小さな露の粒が、やわらかな光を返しています。
そのひとつひとつが、季節が確かに移ろっていることをそっと知らせてくれるようです。

澄んだ空気には静けさが混じり、耳を澄ますと、風の音さえもやさしく、どこか遠く感じられます。
そんな秋の入り口に立ちながら、今日も「楽しいコーヒーの時間」のはじまりです。


本日のテーマは「バランス」。
お一人欠席で、今回は経験も知識も豊かな生徒さんたちが集まりました。
そこで、“Coffee Brewing Recipe Building Flow” のテキストに挑戦していただきました。

このテキストは、抽出の流れを整理しながら、
理想とする風味へと少しずつ近づいていくための道しるべのようなもの。
ただし、少し難解で、これまでのクラスでは「むずかしい!」という声も多かった教材です。

けれど、今日の生徒さんたちならきっと使いこなせる。
そう思いながらゆっくりと説明し、それぞれが自分の言葉で記入を進めていきました。
少し迷いながらも、一文ごとに丁寧に書き込まれたノートには、
自分だけの理想を探す真剣なまなざしが映っていました。


持参された豆は、エチオピアとインドネシアのハニープロセス。
どちらも個性が強く、今回のテーマ「バランス」とはやや異なる印象。
そこで、個性を活かす抽出と、調和を整える抽出の違いについてお話ししました。

あわせて、比較のためにブラジルのパルプドナチュラルとウォッシュドをカッピング。
精製方法によって変わる風味のニュアンスを確かめながら、
「バランスとは何か」を、それぞれの感覚で考えていただきました。


1回目の抽出を終えて、
皆さんで味を確かめながら、それぞれの課題を共有。

エチオピアの豆は、ココナッツを思わせるやわらかな香りが印象的でしたが、
酸味が控えめで後味に渋みが残るとの感想が。
インドネシアの豆は、苦味の中にナッツのような香ばしさがあり、
抽出された生徒さん(沖縄ご出身)は「島豆腐みたいな味わいですね」と微笑まれました。

ここから、2回目の抽出では、1回目の課題をふまえて修正と再挑戦。
味の余韻や甘みの残り方を意識しながら、それぞれの“もう少し先”を目指します。

エチオピアの豆は、酸の輪郭がやわらぎ、余韻に穏やかな甘みが生まれました。
インドネシアの豆は、ボリューム感が増し、丸みのある味わいに変化。
どちらも一杯目とはまるで違う表情を見せてくれました。

“完璧なバランス”ではないけれど、
それぞれの個性が息づき、確かにおいしい一杯に仕上がった瞬間。
教室にふわりと立ちのぼる香りの中で、皆さんの表情もやわらかくほころびました。


次回のテーマは「甘味」。
香りと酸、そして苦味の間でそっと顔をのぞかせる“やさしい甘み”を探します。

コーヒーの世界には、ひとつの正解があるわけではなく、
その日の心や温度、手の動きによって味は少しずつ変わっていきます。
だからこそ、毎回の教室が新しい発見の連なりであり、
そこに立ち会うたびに、静かに胸が温かくなります。

露を抱いた朝の光が、やがて風に溶けていくように、
今日の学びもまた、ゆるやかに心の中へ沁みていきます。
ひとつの滴が次の季節の種となり、やがてまた新しい香りを咲かせる日まで――。
やさしい風のように、そっと日々を包む珈琲の時間でありますように。

中級珈琲教室のご案内

コーヒーをもっと深く、もっと自由に楽しむための中級クラスです。
毎回ひとつのテーマを設け、課題豆やご持参の豆を通して、味わいの奥行きや抽出の幅を学びます。
豆の選び方から一杯を仕上げるまでの流れを体験しながら、コーヒーの世界をより広く感じていただけます。

◆ テーマにあったコーヒーをご持参ください ◆
おいしいコーヒーの選び方・抽出のコツを、テーマに沿って学びます。

【講座の内容】
・課題豆を試飲し、風味や特徴を解説
・テーマに沿った抽出にチャレンジ
・ご持参いただいたコーヒー豆を抽出し、全員で味わいと風味の違いをチェック
・その日のテーマについて、抽出のポイントや工夫を学びます

一年をかけて12のテーマ(キレ、コク、浅煎り、深煎り、バランス、甘み、香り、酸味、口当たり、後口、精製方法に注目、品種に注目)に挑戦します。

講師:MicT 富川義隆
日時:第2金曜 9:30〜11:00(90分)
場所:ミクト講座スペース(高岡市姫野497-1)
受講料:9,000円(3回分)
※3回目以降は、受講料(3回分9,000円/1回3,500円)を再度お支払いください。

新豆入荷|ブラジル モロアルト イアパル(中煎)

木の葉がわずかに色づきはじめ、空気に澄んだ気配が混じるころ。
ブラジルから、穏やかな陽だまりのような一杯が届きました。
その名は「モロアルト イアパル(ウォッシュド)」。

ひと口ふくむと、りんごの瑞々しさとレーズンの甘やかさがやさしく広がります。
ナッツの香ばしさが輪郭を描き、蜜のような甘みがゆるやかに溶け合う。
明るい酸(malic)が全体を引き締め、後口にはクリーンで甘い余韻が長く続きます。
“ブラジル=まろやか”の先にある、透明感と品のよさが魅力の一杯です。

スルデミナスの丘陵地に広がるモロアルト農園は、200年以上の歴史を刻む名門。
環境への配慮と品質改良を重ね、養蜂や水資源の循環にも取り組んでいます。
ブラジルでは稀少なウォッシュド精製によって引き出された、
澄んだ風味と“きれいな甘み”を、どうぞ静かな秋の日に。

──“清らかな甘み”が静かに満ちる、洗練のブラジル。
月の光が冴えわたるこの季節に、心ほどけるコーヒーをどうぞ。

□ Coffee Profile|詳細情報
エリア:ミナスジェライス州 スルデミナス地域
農園名:モロアルト農園
生産者:ハロルド・ヴィエラ・デ・カルヴァルホ
標高:1,000m
品種:イアパル(IAPAR)
生産処理:ウォッシュド

□ Cupping Comments|風味評価
Apple, Raisin, Nuts, Sweet, Malic, Bright, Honey, Sweet Finish
りんご、レーズン、ナッツ、スイート、マリック、ブライト、ハチミツ、甘い余韻

神無月 陸日― MicT 新スタッフ育成トレーニング

月白く冴ゆる日に、技と心を磨く。

十五夜の月が静かに昇るその日。
MicT高岡店では、朝九時から一人の新しいスタッフが参加する「新スタッフ育成プログラム」が行われました。
これは、お客様向けの「基礎トレーニング・1DAY集中プログラム」をもとにした社内研修であり、
試用期間を終えたスタッフが現場の抽出業務に立つ前に受ける、重要なステップです。

トレーニングに先立ち、あらかじめ各講座の予習資料をお渡しし、
基本的な理論や用語を理解してから臨めるよう準備を整えました。
MicTでは、受け身ではなく「考えながら学ぶ」姿勢を大切にしています。
疑問を持ち、自らの手で確かめる。
それが“学びを自分のものにする”ための最初の一歩です。


● 珈琲の味覚講座(カッピング/60分)

トレーニングのはじまりは、味覚を整える時間から。
カッピングシートを渡し、理解してきたか簡単な質問をして確認。
並べられた7種類のカップに注がれたコーヒーのアロマを嗅いでいきました。
珈琲は名称は思い込みを防ぎため伏せてあります。
お湯を注ぎ、カッピングの基本を説明しながら準備。
カッピングその一連の動作のなかで、フレーバー、アシディティー、マウスフィール、スイートネスといった各項目を感じ取り、
「どんな果実に近いのか」「どんな質感を持つのか」を言葉にしていく練習を重ねました。

スタッフはカップに向き合いながら、
「この酸味は林檎のよう」「これはジャスミンに似ている」と、
思考を声にしながら香味の世界を探ります。
MicTが重んじる“味覚の言語化”は、ただ飲むだけではなく、
一杯の個性を正確に理解し、お客様に伝えるための基礎。
その基礎を体で覚える時間となりました。

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神無月四日|初級珈琲教室

ミクトのすぐ近く、新湊の町では、十月一日に「新湊曳山まつり」が行われました。
放生津八幡宮の秋季例祭として知られるこのお祭りは、
昼は絢爛豪華な「花山」、夜は幻想的な「提灯山」と、
一日で二つの表情を見せてくれます。

十三基の曳山が連なる光景は、まるで時代絵巻のよう。
すぐそばを通り抜けると、軋む車輪の音や掛け声が胸に響き、
夕暮れには提灯の灯りが水面に映り、港町ならではの情景が広がります。
ミクトのあるこの町の日常のすぐ隣に、
こんなにも息づいた伝統があることを、改めて誇らしく感じます。

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10月4日《MicT富山店》秋のスイーツ はじまりました。

かぼちゃプリン と ショコラマロンマフィン

少しずつ陽ざしがやわらぎ、風の中に秋の香りがまじる頃。
お店の窓から見える景色も、どこかあたたかい色合いを帯びてきました。
そんな季節に合わせて、MicTでは心までやさしく包みこむような
秋のスイーツがはじまりました。


■ かぼちゃプリン
しっとりとなめらかな口あたりのかぼちゃプリン。
やさしい甘さの中に、かぼちゃ本来の豊かな風味が広がります。
ふんわりと添えた生クリームには、パンプキンシードとシナモンを少し。
香ばしいチップスを添えて、秋の実りを小さな皿の上にぎゅっと閉じ込めました。


■ ショコラマロンマフィン
カカオの香りがふわっと立ちのぼるショコラマロンマフィン。
しっとりと焼き上げたチョコレート生地の中に、
栗のやさしい甘みがほっくりと溶け込みます。
温かなコーヒーと合わせれば、
静かな秋のひとときにやさしいぬくもりが広がります。


季節がゆっくりと深まるように、
一口ごとに心がほどけていく――
そんな秋の甘い時間を、どうぞMicTでお楽しみください。

神無月 朔日

本日、MicTは13周年を迎えることができました。

2013年10月1日
富山市荒川に小さな一歩を踏み出して以来、
これまで歩んでこられたのは
日々お店に足を運んでくださるお客様
いつも温かく見守ってくださる皆さまのおかげです。

心より感謝申し上げます。

“コーヒーから始まる物語”を大切に、
私たちは一杯のコーヒーを通して
暮らしの中に小さな幸せと豊かな時間を
届けたいと願い日々向き合ってまいりました。

この13年の間には
多くの出会いと学び、挑戦がありましたが、
皆さまと共に重ねてきた時間が
今のMicTを形づくっています。

これからもその想いを変わらず胸に刻み、
心に残る一杯をお届けできるよう努めてまいります。

14年目のMicTもどうぞよろしくお願い申し上げます。

長月 廿七日|出張珈琲教室(越中八尾黒瀬谷)

黒瀬谷は、八尾の町から川沿いの道をしばらく走った先にあります。
谷あいをゆるやかに流れる久婦須川と、その両側に広がる田んぼ。
山の緑に囲まれた集落では、季節ごとに違う色や匂いが立ちのぼり、訪れる人を迎えてくれます。

春には道端に小さな花が咲き、シャクヤクの畑が一面に広がります。
夏には清流が涼しい風を運び、秋には稲穂が金色に波打ち、谷全体がやさしい光に包まれます。
歩いていると、水の音と鳥の声が背中を押してくれるようで、日々の慌ただしさを少し忘れさせてくれます。
ここでは、風景と暮らしが今も寄り添うように続いているのです。

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【Café《富山店》】MicT Selection|新ラインナップ(5種)

MicT Selection|新ラインナップ(5種)

ミクトのカフェでお楽しみいただける「MicT セレクション」が、
この秋、新しい顔ぶれになりました。
世界中から選りすぐった5種類のコーヒーが揃い、
香りも、味わいも、ますます個性豊かに。
その日の気分やシーンに合わせて、特別な一杯をお選びください。

今回のラインナップは、どれも物語を持った特別な豆ばかりです。


まずは【AWARD WINNER】の2種。

コロンビア ラ シベリア ゲイシャ
トリマ地区でも評価の高い農園が手がけるゲイシャ。
まさに「選ばれしゲイシャ」と呼ぶにふさわしい存在で、
華やかさと透明感、上質な酸のバランスが際立つ一杯です。

ブラジル シティオ ブラガ
世界最大のコーヒー生産国ブラジルの中でも、
エスピリット・サント州のコンテスト入賞ロット。
柔らかくやさしい口当たりと、フルーティーな甘さが心地よいコーヒーです。


続いて【SELECTION】の3種。

コロンビア ファンマルティン シドラ ナチュラル
「競技会で注目された豆」として知られる希少品種シドラのナチュラル精製ロット。
フルーティーで華やか、それでいて芯のある複雑な味わいをお楽しみいただけます。

インドネシア コピルワック ワイルド
天然のジャコウネコが食べた実から生まれる、世界的にも貴重なルワックコーヒー。
野性味を感じる香りと濃厚な甘み、まろやかな口当たりが魅力です。

パナマ サヴェージ ゲイシャ イリデセンス
SAVAGE COFFEEが手がける革新的な発酵ロット。
光を受けて色を変える“イリデセンス”の名のとおり、
ジャスミンやシトラスの香り、透明感ある酸、長く続く余韻が特徴です。


抽出方法は、ペーパードリップとフレンチプレスからお選びいただけます。
お好みのスタイルで、ミクトならではの一杯をどうぞ。

季節の移ろいとともに新しくなったラインナップを、
ぜひ次回のご来店で味わってみてください。
お気に入りの一杯が、きっと見つかります。

カルダモンコーヒーはじめました。

カルダモンとアニスがふんわりと香る、

秋に似合うスパイスコーヒーです。
カルダモンの爽やかな風が、
一口ごとに胸の奥をすっと通り抜け、
アニスのやさしい甘みがそっとあとを追います。

ドライオレンジを浮かべると、
果実のあたたかい香りが重なり、
カップの中に小さな秋のひだまりが生まれます。

雨あがりの風に包まれるような、
少し特別な一杯。
ゆっくりと息をつく時間を、
どうぞお楽しみください。

長月廿日|ハンドドリップ体験

雨が降ったりやんだりの朝。
空を見上げると、つばめたちの姿が少しずつ減ってきました。
季節は「玄鳥去(つばめさる)」──
夏をともにした渡り鳥たちが、
静かに南の空へ帰っていく頃です。

羽音が遠ざかるたび、
どこか胸の奥にひとしずくの寂しさが落ちます。
けれどそのあとを追うように、
ひんやりとした風が頬をかすめ、
秋の気配をそっと運んできました。

本日の教室は、同級生の女性4人組。
「ご近所のお友だちですか?」と尋ねると、
「仲良しかどうかはわからないけれど、何かするときは4人で集まるんです」
と、楽しそうに笑って答えてくださいました。

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