露冷たく、虫の音が戸口に響くころ。
秋はいよいよその奥行きを見せはじめ、夜の冷え込みがきつくなってきました。
一枚羽織を重ねて、今夜も富山駅北口の教室へ。
楽しいコーヒーの時間の始まりです。
この日から、全六回の「珈琲入門」講座が新たにスタートしました。
持参いただくのは珈琲豆50gほど。
服装は、ハンドドリップしやすい軽装で。
課題豆を使って抽出レシピを組み立てながら、
一番おいしい一杯を導き出す方法を学んでいきます。
さらに、ご自身で持参した豆でも挑戦し、
豆ごとの特性に合わせたレシピの組み方を体験していきます。
今回のテーマは「抽出温度92℃」。

☕ 今回の課題豆ラインナップ
2025年
10月《入賞豆》ペルー ラヨス デル ソル ゲイシャ【浅煎】
11月《入賞豆》インドネシア ベンコーラン デュア ドライハル【中浅煎】
12月《入賞豆》コロンビア ラ シベリア ゲイシャ【浅煎】
2026年
1月《入賞豆》ホンジュラス トレス ペニャス パカス【浅煎】
2月《希少豆》ホンジュラス ロス ピニャス ティピカ カルバハル【浅煎】
3月《希少豆》コロンビア ファン・マルティン シドラ ナチュラル【浅煎】
いずれも、世界の品評会で入賞、またはごく少量しか流通しない特別なロットたちです。
今回の参加者は7名。
うち3名は前回からの継続受講。
長く通ってくださった男性の方が今回は不参加となり、少し寂しさもありましたが、
新たに4名の方をお迎えし、教室の空気も新しくなりました。
持参豆からスタートする今回の入門。
豆選びからすでに学びが始まっています。
継続組の方々はやはり心得ていて、良いチョイスばかり。
中には、かつてこの講座に通われていた卒業生が焙煎した豆もあり、
その成長の跡が見えて嬉しい驚きもありました。
新しく参加された方々は、専門店以外の豆を持参されていました。
それもまた貴重な体験。
今回は入賞豆や希少豆の魅力に触れる回でもあるため、
これから豆の選び方や焙煎の違いを、少しずつ感じ取っていただけたらと思います。
☕ はじめての抽出
講座のはじまりには、毎回おなじ質問がある。
「ハンドドリップはされていますか?」
「この教室で何を学びたいですか?」
今回は後者を聞きそびれてしまったものの、
ほとんどの方が「ハンドドリップはあまり経験がない」とのこと。
そこで、まずは基本の淹れ方を丁寧に実践していくことに。
ペーパーの折り方、蒸らしの時間、注湯の高さ。
ひとつひとつの工程を確認しながら、お湯の音と香りが静かに広がっていく。
その様子を見ていた継続組の方々も自然と耳を傾け、
「今の方がよくわかるから」と笑顔を見せる場面もありました。

それぞれの席で92℃の抽出が始まり、
抽出後のカップを順に味わっていくと、ひとり特に上手な方が。
「とても安定した注湯ですね」と声をかけると、
「実は高岡の老舗珈琲店の教室に通っていました」との答え。
所作の端々に、積み重ねた経験がにじんでいました。
継続組の持参豆の抽出も進み、
92℃という温度の「答えのかけら」が、
香りの奥にわずかに見え隠れしていました。
☕ 本日の課題豆 ― ペルー ラヨス デル ソル ゲイシャ【浅煎】
Cup of Excellence 入賞ロット。
ジャスミンの花のように清らかな香り、
ピーチを思わせるやわらかな甘酸っぱさ。
口の中でそっと広がり、余韻が静かに尾を引く一杯。

まずはカッピングから始まり、
ゲイシャ特有の華やかさが室内に満ちていく。
継続組からは「おいしい」「香りがすごい」と感嘆の声、
新規の方々は「これが珈琲なんですか?」と驚きの表情。
珈琲という世界の奥行きを、まざまざと感じる瞬間でした。
☕ 抽出実践 ― 92℃の挑戦
ここからが本番。
「今回は92℃での抽出が課題です」と伝え、実践が始まりました。
初回はペーパーが詰まり、お湯の流れが止まる方も。
けれどその中で、先ほどの経験者の方だけが、
注湯のリズムを崩さず、静かに湯を中心へと落とし続けていました。
継続組は一度抽出を終え、味を確認。
湯温、注湯の速さ、流れの安定──それぞれ課題を見つけて再挑戦。
二回目の抽出が終わった瞬間、
教室を包む香りが一気に変わりました。

口に含むと、華やかで凛とした香りが立ち上がり、
三人三様の美しい味わいが完成。
「これが92℃の意味なんですね」と、誰もが深くうなずきました。
温度の違いがもたらす風味の変化。
抽出スピードや注湯の安定が、
味の透明感や甘さをどれほど左右するか。
その一杯を通して、理屈ではなく“感覚で理解する”時間となりました。
この日の教室は、まるで静かな実験室のような空気に包まれていました。
お湯の音、香り、湯気、そして真剣な眼差し。
そのすべてが、ひとつの「良い時間」をつくり上げていました。
砺波や南砺からも足を運んでくださる方々の姿に、
珈琲への想いの深さを感じ、教室全体が温かい空気に満たされました。
日ごとに陽の短さを感じるこの頃。
カップの中の香りが、少しずつ冬の気配を運んできます。
次回の教室も、どうぞお楽しみに。
また新しい一杯に出会えますように。

















