10月20日|珈琲入門・北日本新聞アーバン校

露冷たく、虫の音が戸口に響くころ。
秋はいよいよその奥行きを見せはじめ、夜の冷え込みがきつくなってきました。
一枚羽織を重ねて、今夜も富山駅北口の教室へ。

楽しいコーヒーの時間の始まりです。

この日から、全六回の「珈琲入門」講座が新たにスタートしました。
持参いただくのは珈琲豆50gほど。
服装は、ハンドドリップしやすい軽装で。
課題豆を使って抽出レシピを組み立てながら、
一番おいしい一杯を導き出す方法を学んでいきます。
さらに、ご自身で持参した豆でも挑戦し、
豆ごとの特性に合わせたレシピの組み方を体験していきます。
今回のテーマは「抽出温度92℃」。


☕ 今回の課題豆ラインナップ

2025年
10月《入賞豆》ペルー ラヨス デル ソル ゲイシャ【浅煎】
11月《入賞豆》インドネシア ベンコーラン デュア ドライハル【中浅煎】
12月《入賞豆》コロンビア ラ シベリア ゲイシャ【浅煎】

2026年
1月《入賞豆》ホンジュラス トレス ペニャス パカス【浅煎】
2月《希少豆》ホンジュラス ロス ピニャス ティピカ カルバハル【浅煎】
3月《希少豆》コロンビア ファン・マルティン シドラ ナチュラル【浅煎】

いずれも、世界の品評会で入賞、またはごく少量しか流通しない特別なロットたちです。


今回の参加者は7名。
うち3名は前回からの継続受講。
長く通ってくださった男性の方が今回は不参加となり、少し寂しさもありましたが、
新たに4名の方をお迎えし、教室の空気も新しくなりました。

持参豆からスタートする今回の入門。
豆選びからすでに学びが始まっています。
継続組の方々はやはり心得ていて、良いチョイスばかり。
中には、かつてこの講座に通われていた卒業生が焙煎した豆もあり、
その成長の跡が見えて嬉しい驚きもありました。

新しく参加された方々は、専門店以外の豆を持参されていました。
それもまた貴重な体験。
今回は入賞豆や希少豆の魅力に触れる回でもあるため、
これから豆の選び方や焙煎の違いを、少しずつ感じ取っていただけたらと思います。


☕ はじめての抽出

講座のはじまりには、毎回おなじ質問がある。
「ハンドドリップはされていますか?」
「この教室で何を学びたいですか?」

今回は後者を聞きそびれてしまったものの、
ほとんどの方が「ハンドドリップはあまり経験がない」とのこと。
そこで、まずは基本の淹れ方を丁寧に実践していくことに。

ペーパーの折り方、蒸らしの時間、注湯の高さ。
ひとつひとつの工程を確認しながら、お湯の音と香りが静かに広がっていく。
その様子を見ていた継続組の方々も自然と耳を傾け、
「今の方がよくわかるから」と笑顔を見せる場面もありました。

それぞれの席で92℃の抽出が始まり、
抽出後のカップを順に味わっていくと、ひとり特に上手な方が。
「とても安定した注湯ですね」と声をかけると、
「実は高岡の老舗珈琲店の教室に通っていました」との答え。
所作の端々に、積み重ねた経験がにじんでいました。

継続組の持参豆の抽出も進み、
92℃という温度の「答えのかけら」が、
香りの奥にわずかに見え隠れしていました。


☕ 本日の課題豆 ― ペルー ラヨス デル ソル ゲイシャ【浅煎】

Cup of Excellence 入賞ロット。
ジャスミンの花のように清らかな香り、
ピーチを思わせるやわらかな甘酸っぱさ。
口の中でそっと広がり、余韻が静かに尾を引く一杯。

まずはカッピングから始まり、
ゲイシャ特有の華やかさが室内に満ちていく。
継続組からは「おいしい」「香りがすごい」と感嘆の声、
新規の方々は「これが珈琲なんですか?」と驚きの表情。
珈琲という世界の奥行きを、まざまざと感じる瞬間でした。


☕ 抽出実践 ― 92℃の挑戦

ここからが本番。
「今回は92℃での抽出が課題です」と伝え、実践が始まりました。

初回はペーパーが詰まり、お湯の流れが止まる方も。
けれどその中で、先ほどの経験者の方だけが、
注湯のリズムを崩さず、静かに湯を中心へと落とし続けていました。

継続組は一度抽出を終え、味を確認。
湯温、注湯の速さ、流れの安定──それぞれ課題を見つけて再挑戦。
二回目の抽出が終わった瞬間、
教室を包む香りが一気に変わりました。

口に含むと、華やかで凛とした香りが立ち上がり、
三人三様の美しい味わいが完成。
「これが92℃の意味なんですね」と、誰もが深くうなずきました。

温度の違いがもたらす風味の変化。
抽出スピードや注湯の安定が、
味の透明感や甘さをどれほど左右するか。
その一杯を通して、理屈ではなく“感覚で理解する”時間となりました。


この日の教室は、まるで静かな実験室のような空気に包まれていました。
お湯の音、香り、湯気、そして真剣な眼差し。
そのすべてが、ひとつの「良い時間」をつくり上げていました。

砺波や南砺からも足を運んでくださる方々の姿に、
珈琲への想いの深さを感じ、教室全体が温かい空気に満たされました。

日ごとに陽の短さを感じるこの頃。
カップの中の香りが、少しずつ冬の気配を運んできます。
次回の教室も、どうぞお楽しみに。
また新しい一杯に出会えますように。

神無月拾五日|富山アピタ東珈琲教室・アピタ富山珈琲教室

露が冷たくなり、空気が澄みわたるころ。
道端の草花がわずかに色づき、風に乗って菊の香りがほのかに漂います。
秋の深まりとともに、珈琲の香りもどこかしっとりと感じられる季節になりました。

富山アピタ東の生徒さんたちは、十月四日に開催されたイベントで、はじめてのカフェ出店に挑戦されました。
このお話は、実は前回の教室から続く小さな物語です。
あのときは「どんなメニューにしよう」「看板はどうする?」と、試行錯誤の真っ最中。
テーブルの上には紙コップとメニュー案が並び、みんなで味を確かめながら、笑いの絶えない準備時間でした。

そして迎えた本番。
「どうでした?」と尋ねると、「思ったよりお客さんが来なかったんです」と少し肩を落としてしょんぼりとしています。
資料をみると「ちゃんと売上はプラスなってますね。初回で上出来では?」と尋ねると笑顔に戻る瞬間。
「場所が悪かった」「もっとこうしたかった」と次々に出てくる言葉には、
すでに次への意欲がにじんでいます。

初めての出店という舞台は、きっと思うようにいかないことも多かったでしょう。
けれど、その悔しさや戸惑いも含めて、すべてが成長なのです。
「もっとこうしたい」という気持ちは、誰よりも強い証拠です。
次に並ぶカップは、きっと今日よりも少しおいしくなるはずです。

さて、今日も楽しいコーヒーの時間の始まりです。
この日の豆は、南青山で購入したケニアのウォシュド。
前回お試しで参加された方が正式に生徒さんとなり、心新たなスタート……のはずが、
お一人がなかなか現れません。

どうやら「100円ショップでどの雑貨を買うか迷っていたら時間になってしまった」とのこと。
教室中が笑いに包まれ、穏やかな空気が流れました。

いつものようにカッピングをして味を確かめ、抽出を重ねながら風味の特性を考えます。
一年以上通ってくださっている方が多く、質問が次々に飛び交って、なかなか進まないのもこのクラスの良いところ。
時間ぎりぎりまで真剣な話と笑い声が入り混じり、あっという間のひとときでした。

教室が終わるころ、「実は出店のときにちょっと喧嘩しちゃったんです」との打ち明け話。
「いい経験をしましたね」とお伝えすると、
少し迷ったような、反省したような、照れたように笑っていました。
うまくいくことも、そうでないことも。
どちらも次の一杯をやさしく豊かにしてくれる、大切な時間です。

日が暮れるのも早くなり、夕焼けの色を見送りながら次の教室へ。
アピタ富山店では、少し疲れを感じつつもまた新しい香りが広がります。

この日はお一人、お仕事の都合でお休み。
課題豆は、生徒さんの娘さんがフィリピンのスーパーで購入された豆でした。
深煎りでしっかりとした苦味、袋には「アラビカ100%」の文字。
けれどその香りには、どこかベトナムコーヒーを思わせるコーヒー。手ごわい雰囲気をかもしだしています。

さらに、この日もうひとつの主役は「鉄瓶」。
生徒さんが、お父様から受け継いだ鉄瓶を持参され、
「いつもこれで淹れてるんです」と誇らしげに話されました。
ケトルと鉄瓶、それぞれで同じ豆を淹れて飲み比べると、
「本当に違うね」と驚きと笑いが混ざります。
湯にとける鉄の成分が、風味の輪郭をシャープに変えるようでした。

こうして季節が移ろうように、珈琲の表情もまた変わっていきます。
その変化を共に感じ、味わい、笑い合える時間こそ、
教室のいちばんの醍醐味なのかもしれません。

神無月拾日|中級珈琲教室

露が冷たくなり、秋の深まりを感じる頃。
草の上に並ぶ小さな露の粒が、やわらかな光を返しています。
そのひとつひとつが、季節が確かに移ろっていることをそっと知らせてくれるようです。

澄んだ空気には静けさが混じり、耳を澄ますと、風の音さえもやさしく、どこか遠く感じられます。
そんな秋の入り口に立ちながら、今日も「楽しいコーヒーの時間」のはじまりです。


本日のテーマは「バランス」。
お一人欠席で、今回は経験も知識も豊かな生徒さんたちが集まりました。
そこで、“Coffee Brewing Recipe Building Flow” のテキストに挑戦していただきました。

このテキストは、抽出の流れを整理しながら、
理想とする風味へと少しずつ近づいていくための道しるべのようなもの。
ただし、少し難解で、これまでのクラスでは「むずかしい!」という声も多かった教材です。

けれど、今日の生徒さんたちならきっと使いこなせる。
そう思いながらゆっくりと説明し、それぞれが自分の言葉で記入を進めていきました。
少し迷いながらも、一文ごとに丁寧に書き込まれたノートには、
自分だけの理想を探す真剣なまなざしが映っていました。


持参された豆は、エチオピアとインドネシアのハニープロセス。
どちらも個性が強く、今回のテーマ「バランス」とはやや異なる印象。
そこで、個性を活かす抽出と、調和を整える抽出の違いについてお話ししました。

あわせて、比較のためにブラジルのパルプドナチュラルとウォッシュドをカッピング。
精製方法によって変わる風味のニュアンスを確かめながら、
「バランスとは何か」を、それぞれの感覚で考えていただきました。


1回目の抽出を終えて、
皆さんで味を確かめながら、それぞれの課題を共有。

エチオピアの豆は、ココナッツを思わせるやわらかな香りが印象的でしたが、
酸味が控えめで後味に渋みが残るとの感想が。
インドネシアの豆は、苦味の中にナッツのような香ばしさがあり、
抽出された生徒さん(沖縄ご出身)は「島豆腐みたいな味わいですね」と微笑まれました。

ここから、2回目の抽出では、1回目の課題をふまえて修正と再挑戦。
味の余韻や甘みの残り方を意識しながら、それぞれの“もう少し先”を目指します。

エチオピアの豆は、酸の輪郭がやわらぎ、余韻に穏やかな甘みが生まれました。
インドネシアの豆は、ボリューム感が増し、丸みのある味わいに変化。
どちらも一杯目とはまるで違う表情を見せてくれました。

“完璧なバランス”ではないけれど、
それぞれの個性が息づき、確かにおいしい一杯に仕上がった瞬間。
教室にふわりと立ちのぼる香りの中で、皆さんの表情もやわらかくほころびました。


次回のテーマは「甘味」。
香りと酸、そして苦味の間でそっと顔をのぞかせる“やさしい甘み”を探します。

コーヒーの世界には、ひとつの正解があるわけではなく、
その日の心や温度、手の動きによって味は少しずつ変わっていきます。
だからこそ、毎回の教室が新しい発見の連なりであり、
そこに立ち会うたびに、静かに胸が温かくなります。

露を抱いた朝の光が、やがて風に溶けていくように、
今日の学びもまた、ゆるやかに心の中へ沁みていきます。
ひとつの滴が次の季節の種となり、やがてまた新しい香りを咲かせる日まで――。
やさしい風のように、そっと日々を包む珈琲の時間でありますように。

中級珈琲教室のご案内

コーヒーをもっと深く、もっと自由に楽しむための中級クラスです。
毎回ひとつのテーマを設け、課題豆やご持参の豆を通して、味わいの奥行きや抽出の幅を学びます。
豆の選び方から一杯を仕上げるまでの流れを体験しながら、コーヒーの世界をより広く感じていただけます。

◆ テーマにあったコーヒーをご持参ください ◆
おいしいコーヒーの選び方・抽出のコツを、テーマに沿って学びます。

【講座の内容】
・課題豆を試飲し、風味や特徴を解説
・テーマに沿った抽出にチャレンジ
・ご持参いただいたコーヒー豆を抽出し、全員で味わいと風味の違いをチェック
・その日のテーマについて、抽出のポイントや工夫を学びます

一年をかけて12のテーマ(キレ、コク、浅煎り、深煎り、バランス、甘み、香り、酸味、口当たり、後口、精製方法に注目、品種に注目)に挑戦します。

講師:MicT 富川義隆
日時:第2金曜 9:30〜11:00(90分)
場所:ミクト講座スペース(高岡市姫野497-1)
受講料:9,000円(3回分)
※3回目以降は、受講料(3回分9,000円/1回3,500円)を再度お支払いください。

神無月四日|初級珈琲教室

ミクトのすぐ近く、新湊の町では、十月一日に「新湊曳山まつり」が行われました。
放生津八幡宮の秋季例祭として知られるこのお祭りは、
昼は絢爛豪華な「花山」、夜は幻想的な「提灯山」と、
一日で二つの表情を見せてくれます。

十三基の曳山が連なる光景は、まるで時代絵巻のよう。
すぐそばを通り抜けると、軋む車輪の音や掛け声が胸に響き、
夕暮れには提灯の灯りが水面に映り、港町ならではの情景が広がります。
ミクトのあるこの町の日常のすぐ隣に、
こんなにも息づいた伝統があることを、改めて誇らしく感じます。

“神無月四日|初級珈琲教室” の続きを読む

長月 廿七日|出張珈琲教室(越中八尾黒瀬谷)

黒瀬谷は、八尾の町から川沿いの道をしばらく走った先にあります。
谷あいをゆるやかに流れる久婦須川と、その両側に広がる田んぼ。
山の緑に囲まれた集落では、季節ごとに違う色や匂いが立ちのぼり、訪れる人を迎えてくれます。

春には道端に小さな花が咲き、シャクヤクの畑が一面に広がります。
夏には清流が涼しい風を運び、秋には稲穂が金色に波打ち、谷全体がやさしい光に包まれます。
歩いていると、水の音と鳥の声が背中を押してくれるようで、日々の慌ただしさを少し忘れさせてくれます。
ここでは、風景と暮らしが今も寄り添うように続いているのです。

“長月 廿七日|出張珈琲教室(越中八尾黒瀬谷)” の続きを読む

長月廿日|ハンドドリップ体験

雨が降ったりやんだりの朝。
空を見上げると、つばめたちの姿が少しずつ減ってきました。
季節は「玄鳥去(つばめさる)」──
夏をともにした渡り鳥たちが、
静かに南の空へ帰っていく頃です。

羽音が遠ざかるたび、
どこか胸の奥にひとしずくの寂しさが落ちます。
けれどそのあとを追うように、
ひんやりとした風が頬をかすめ、
秋の気配をそっと運んできました。

本日の教室は、同級生の女性4人組。
「ご近所のお友だちですか?」と尋ねると、
「仲良しかどうかはわからないけれど、何かするときは4人で集まるんです」
と、楽しそうに笑って答えてくださいました。

“長月廿日|ハンドドリップ体験” の続きを読む

9月17日 アピタ珈琲教室

楽しいコーヒーの時間のはじまり──その60分ほど前。
まだ静かな教室で、生徒さんとふたり、来月のイベントについて打ち合わせをしました。

先月の 8月20日の中級抽出教室 で話題になったイベント計画を、今日は一つずつ形にしていく時間。

責任者のこと、人員配置、保健所への届出、仕入れや器具、オペレーション、メニュー……
当日の流れを思い描きながら、気になる点を書き出して整理していきます。
ノートにはびっしりと計画が書き込まれ、メールでの相談を経て、ついに本日の打ち合わせ。

話しているうちに、生徒さんの表情が少しずつ和らぎ、
最後には「大丈夫そうですね」という安心した顔に。
計画がぐっと形になり、イベントの輪郭がくっきりと見えてきました。

今回、生徒さんたちが挑戦するのは リレー・フォー・ライフ・ジャパン富山2025 でのカフェ出店。
がんと共に生きる仲間が集い、歩き、つながる特別な一日に、
自分たちのコーヒーで彩りを添えます。

リレー・フォー・ライフ・ジャパン富山公式サイトはこちら

“9月17日 アピタ珈琲教室” の続きを読む

9月12日 中級珈琲教室

テーマ「深煎り」

朝からお店の前の道では、工事の人たちが汗をぬぐいながら作業をしていました。
片側通行になった道には車が並び、いつもは静かな街が少し賑やかに。
そこへ滝のような豪雨が降り出しても、工事の手は止まらず、
雨に打たれながら作業を続ける姿に、思わず「プロだなあ」と感心してしまいました。

そんな朝を抜けて、店内には深煎りの香ばしい香りが広がります。
さあ、楽しいコーヒーの時間のはじまりです。

今日のテーマは「深煎り」。
課題豆には、大阪・兵庫で店舗を展開する自家焙煎店のキリマンジャロをご用意しました。
今日はお休みの方もいて、生徒さんはお二人だけ。
少人数だからこそ、じっくり取り組める贅沢な時間です。
質問もしやすく、抽出の一杯ごとに感想を交わしながら、
二人ならではの濃いレッスンが進んでいきました。

今日は特別に「一番おいしい珈琲を淹れてくださった方にプレゼント」をご用意。
ミクトセレクションから、インドネシア・コピルワックワイルド。
とても貴重なお豆なので、12gだけの特別な贈り物です。

“9月12日 中級珈琲教室” の続きを読む

9月8日|北日本新聞「珈琲入門 その6」

富山駅前の空は、少しずつ群青に溶けてゆき、街の灯りが一つ、また一つとともりはじめていました。
この日の富山の日没は18時09分。
夏の名残と秋の気配が交わる夕暮れに、人々の影は長く伸び、空は静かに季節の色を映しています。

未明には月食も見られたそうです。
夜明け前の空に浮かぶ月は、刻一刻と姿を変えながら淡い光を落としていたといいます。
一日の始まりから終わりまで、空は絶えず物語を奏でていました。
昼の明るさから夕暮れの静けさへ、そして再び夜へ――
その大きな移ろいの中で、私たちは小さな一杯のコーヒーに心を寄せていたのです。

さて、楽しいコーヒーの時間のはじまりです。
この日のテーマは「メリタのアロマジック」。
これまで続けてきたいろいろなフィルターの検証も、今回でひと区切りとなります。
アロマジックは台形専用のフィルターで、円錐型のハリオV60にはそもそも合いません。
そこで今回は、同じ台形系のカリタを用いて検証を行いました。

(心の声:ここでメリタのドリッパーを使ってしまうと、検証の趣旨がブレるんですよね…。メリタの小さな一つ穴、あれがすべてを支配してしまう。お湯をどんなリズムで注いでも、結局は小さな出口のキャパシティで流れが決まってしまうんです。だから器の中でお湯が滞留してしまい、注ぎの工夫が味に映りにくい。要するに“注ぎを比べる実験”をしようとしても、穴の設計が先に色を塗ってしまうようなもの。

“9月8日|北日本新聞「珈琲入門 その6」” の続きを読む

9月5日 初級珈琲教室

処暑の候。

夏のぬくもりがまだ空気の底に残りながらも、しとしとと降る雨が庭を濡らし、葉先には小さな露がひらめきました。
その合間をすり抜ける風は、白露へと続く秋の入口を知らせてくれるかのよう。
夏と秋が重なり合う一日が、静かに始まります。

そして――楽しいコーヒーの時間のはじまりです。
今日は新しく二名の方が仲間に加わり、教室には瑞々しい空気が流れました。

最初に用意したのは、エチオピア・ゲシャ ナチュラル(浅煎り)と、ブラジル・ダテーラ(中深煎り)。
カッピングで香味を比べていただき、多数決をとろうとしましたが、結果は同じ数。
最後はじゃんけんで決まりました。選ばれたのは在来種のゲシャでした。

ここで少し、皆さまと言葉を交わしました。
「ゲシャとゲイシャ、同じ豆ですか?」
――いいえ、ルーツは同じエチオピアの地にありますが、歩んだ道のりは異なります。
1930年代にゲシャの地から持ち出された種がパナマで広まり、世界に名を轟かせたものがゲイシャ。
一方、エチオピアの大地に今も残る在来の系統がゲシャ。
同じ起源をもちながら、歴史とテロワールの違いが、微妙に異なる香味の世界を生み出しているのです。

“9月5日 初級珈琲教室” の続きを読む