朝の光がまだ柔らかい店内に、
湯気とともに立ちのぼる香ばしい香り。
この日、1DAY集中プログラムの受講が始まりました。
カッピング(珈琲の風味を感じ取る)、ブリュー(抽出技術)、
バリスタ(エスプレッソの理解と技術)、ラテアート(表現の技術)。
4つのテーマを各90分ずつ、
一日で学び、体験し、積み重ねていくプログラムです。
開店前の静けさの中、
8カップの珈琲を前に真剣な眼差しを向ける彼女の姿がありました。
彼女の目標は──焙煎士になること。
数日前、ひとりのお客様から尋ねられました。
「この教室に、焙煎の講座はありませんか?」
MicTの講座には焙煎そのものを扱うクラスはありません。
けれど、その言葉の奥にある想いに耳を傾けました。

「自家焙煎店を開きたいんです」と彼女。
それなら、まず“味を見極める力”を学びましょう。
焙煎の技術は、ただ焼くためのものではなく、
美味しさを感じ取る感性と共に育つものだからです。
「小さな焙煎機を買って、たくさん焼いて、たくさん飲んでみてください。
そして、自分の舌で確かめてください。」
そんな言葉を交わしながら、彼女は集中プログラムへの参加を決めました。
講習の合間、彼女といろいろな話をしました。
どうしてお店を開きたいと思ったのか。
今どんな環境で珈琲とかかわっているのか。
そして、これからどんな未来を描いているのか。
気づけばこちらも、自分の歩んできた道を思い返していました。
お店を開き、焙煎をし、教室を開き、人と出会い、
支えられながら積み重ねてきたMicTの日々。
それらの小さな出来事が、今という形を作ってきたのだと思います。

プログラムを終えたあと、
彼女の未来の焙煎店で、お客様が微笑み、
香ばしい香りが満ちている光景がふと浮かびました。
いつかその日が来たときに、
この日の学びと香りを思い出してくれたら──
それほど嬉しいことはありません。
「人は何かを極めようとするとき、
その道の果てがどこにあるかを知らない。
けれども、その道を歩みつづけること自体が、すでに答えなのだ。」
―― 東山魁夷『風景との対話』より


