長月拾九日 プロバットP12 メンテナンスと馴らし焙煎

昨日、ドイツからの長い旅を終え、
ようやくこの場所にやってきたプロバットP12。
受注生産で作られたこの一台が、
ついに高岡は姫野の地に腰を落ち着けたのだと思うと、
秋の朝の光が胸に差し込むような、
しずかなあたたかさが広がります。

朝十時、昨日遅くまで設置をしてくださったお二人が再び訪れました。
全国を忙しく飛び回り、東京のご自宅には月に数日しか戻れないのだとか。
そんなお二人が、焙煎機の扱い方を一つひとつ丁寧に教えてくださいます。
ベアリングへの注油や各部の掃除、部品の外し方、
煙突やファンの手入れ、チャフの捨て方……
手を動かすたび、焙煎機と少しずつ呼吸が合っていくようでした。

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長月拾八日|焙煎機プロバットP12設置 

焙煎機が、ついにやってまいりました。
長き時の川をゆるゆると下り、
幾度もの春秋をめぐりて、ようやく辿り着いた岸辺。
この日を、どれほど待ち望んだことでしょう。

思えば七年前、まだ静かな頃に心ひそかに描いた焙煎所の夢。
時は移ろい、人もまた移ろう。
寄り添い、励まし、道を照らしてくれた人がいれば、
やがて遠くへ旅立っていった人もいました。
そのたびに、また新しい人との出会いがあり、
花が咲き、やがて散り、そして次の季節がやってくるように、
私たちも少しずつ前へと進んできました。

焙煎機が到着する日に、煙突がつかないかもしれない──
そんな一抹の不安も、どうにか回避。

そして迎えたこの日。
朝から煙突屋さんが焙煎機の設置に間に合わせる為、準備に取りかかり、その後
焙煎機の設置に備えて待機してくださいました。

そこへ届いた知らせは、思わぬハプニング。
「焙煎機が富山店に着いてしまいました」

一瞬ひやりとしたものの、すぐに手配が整い、
焙煎機は高岡店へ向けて再出発。
先にメンテナンスの方々が到着し、
少し遅れて輸送班と焙煎機も無事に到着しました。
店先は一気に活気づき、空気がきゅっと引き締まります。

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9月17日 アピタ珈琲教室

楽しいコーヒーの時間のはじまり──その60分ほど前。
まだ静かな教室で、生徒さんとふたり、来月のイベントについて打ち合わせをしました。

先月の 8月20日の中級抽出教室 で話題になったイベント計画を、今日は一つずつ形にしていく時間。

責任者のこと、人員配置、保健所への届出、仕入れや器具、オペレーション、メニュー……
当日の流れを思い描きながら、気になる点を書き出して整理していきます。
ノートにはびっしりと計画が書き込まれ、メールでの相談を経て、ついに本日の打ち合わせ。

話しているうちに、生徒さんの表情が少しずつ和らぎ、
最後には「大丈夫そうですね」という安心した顔に。
計画がぐっと形になり、イベントの輪郭がくっきりと見えてきました。

今回、生徒さんたちが挑戦するのは リレー・フォー・ライフ・ジャパン富山2025 でのカフェ出店。
がんと共に生きる仲間が集い、歩き、つながる特別な一日に、
自分たちのコーヒーで彩りを添えます。

リレー・フォー・ライフ・ジャパン富山公式サイトはこちら

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9月12日 中級珈琲教室

テーマ「深煎り」

朝からお店の前の道では、工事の人たちが汗をぬぐいながら作業をしていました。
片側通行になった道には車が並び、いつもは静かな街が少し賑やかに。
そこへ滝のような豪雨が降り出しても、工事の手は止まらず、
雨に打たれながら作業を続ける姿に、思わず「プロだなあ」と感心してしまいました。

そんな朝を抜けて、店内には深煎りの香ばしい香りが広がります。
さあ、楽しいコーヒーの時間のはじまりです。

今日のテーマは「深煎り」。
課題豆には、大阪・兵庫で店舗を展開する自家焙煎店のキリマンジャロをご用意しました。
今日はお休みの方もいて、生徒さんはお二人だけ。
少人数だからこそ、じっくり取り組める贅沢な時間です。
質問もしやすく、抽出の一杯ごとに感想を交わしながら、
二人ならではの濃いレッスンが進んでいきました。

今日は特別に「一番おいしい珈琲を淹れてくださった方にプレゼント」をご用意。
ミクトセレクションから、インドネシア・コピルワックワイルド。
とても貴重なお豆なので、12gだけの特別な贈り物です。

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MicT Selectio【新豆入荷|パナマ サヴェージ ゲイシャ イリデセンス】

パナマ サヴェージ ゲイシャ イリデセンス(浅煎)

光の角度で色を変えるように、ひと口ごとに異なる表情を見せてくれる一杯。
「イリデセンス」という名を持つゲイシャです。

ジャスミンの透明感ある香りと、白ワインを思わせる気品。
みかんやホワイトグレープフルーツのような柑橘の明るさが広がり、
冷めてくるとアールグレイティーのような優雅な余韻が現れます。

ナチュラル由来の華やかさに比べ、こちらはウォッシュド精製ならではのクリアさと端正な酸が際立ち、
光を受けて多彩に変化する名の通り、カップの中に移ろいゆく美しさを描いています。

□ Coffee Profile|詳細情報
エリア:チリキ県ボルカン
農園名:ボケテ周辺の小規模生産者
標高:1850m~
品種:ゲイシャ
生産処理:カーボニックマセレーション・ウォッシュド

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MicT Selectio【新豆入荷|パナマ ドン エドゥアルド ゲイシャ シンメトリー】

パナマ ドン エドゥアルド ゲイシャ シンメトリー(浅煎)

パナマの高地で育まれたゲイシャのなかでも、ひときわ印象的な一杯。
その名は「シンメトリー」。

カップに鼻を近づけると、ジャスミンのように華やかな香りが立ちのぼり、
口に含めば、桃やアプリコットの甘やかさと、ストロベリーやブラッドオレンジの明るい果実感が次々と広がります。
冷めゆくにつれてグレープフルーツやブドウのニュアンスが顔を覗かせ、
まるで温度の変化に合わせて姿を変える多層的な味わい。

「Symmetry(シンメトリー)」という名の通り、フローラルと果実の均整が美しく調和し、
澄んだ余韻が長く続くその一杯は、特別な時間をそっと彩ってくれるでしょう。

□ Coffee Profile|詳細情報
エリア:チリキ県ボケテ、エル・サルト
農園名:ドン・エドゥアルド農園|ハロルド・サビン氏
標高:1850m
品種:ゲイシャ
生産処理:カーボニックマセレーション・ナチュラル

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9月8日|北日本新聞「珈琲入門 その6」

富山駅前の空は、少しずつ群青に溶けてゆき、街の灯りが一つ、また一つとともりはじめていました。
この日の富山の日没は18時09分。
夏の名残と秋の気配が交わる夕暮れに、人々の影は長く伸び、空は静かに季節の色を映しています。

未明には月食も見られたそうです。
夜明け前の空に浮かぶ月は、刻一刻と姿を変えながら淡い光を落としていたといいます。
一日の始まりから終わりまで、空は絶えず物語を奏でていました。
昼の明るさから夕暮れの静けさへ、そして再び夜へ――
その大きな移ろいの中で、私たちは小さな一杯のコーヒーに心を寄せていたのです。

さて、楽しいコーヒーの時間のはじまりです。
この日のテーマは「メリタのアロマジック」。
これまで続けてきたいろいろなフィルターの検証も、今回でひと区切りとなります。
アロマジックは台形専用のフィルターで、円錐型のハリオV60にはそもそも合いません。
そこで今回は、同じ台形系のカリタを用いて検証を行いました。

(心の声:ここでメリタのドリッパーを使ってしまうと、検証の趣旨がブレるんですよね…。メリタの小さな一つ穴、あれがすべてを支配してしまう。お湯をどんなリズムで注いでも、結局は小さな出口のキャパシティで流れが決まってしまうんです。だから器の中でお湯が滞留してしまい、注ぎの工夫が味に映りにくい。要するに“注ぎを比べる実験”をしようとしても、穴の設計が先に色を塗ってしまうようなもの。

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9月5日 初級珈琲教室

処暑の候。

夏のぬくもりがまだ空気の底に残りながらも、しとしとと降る雨が庭を濡らし、葉先には小さな露がひらめきました。
その合間をすり抜ける風は、白露へと続く秋の入口を知らせてくれるかのよう。
夏と秋が重なり合う一日が、静かに始まります。

そして――楽しいコーヒーの時間のはじまりです。
今日は新しく二名の方が仲間に加わり、教室には瑞々しい空気が流れました。

最初に用意したのは、エチオピア・ゲシャ ナチュラル(浅煎り)と、ブラジル・ダテーラ(中深煎り)。
カッピングで香味を比べていただき、多数決をとろうとしましたが、結果は同じ数。
最後はじゃんけんで決まりました。選ばれたのは在来種のゲシャでした。

ここで少し、皆さまと言葉を交わしました。
「ゲシャとゲイシャ、同じ豆ですか?」
――いいえ、ルーツは同じエチオピアの地にありますが、歩んだ道のりは異なります。
1930年代にゲシャの地から持ち出された種がパナマで広まり、世界に名を轟かせたものがゲイシャ。
一方、エチオピアの大地に今も残る在来の系統がゲシャ。
同じ起源をもちながら、歴史とテロワールの違いが、微妙に異なる香味の世界を生み出しているのです。

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9月6日《MicT富山店》梨のブランマンジェ、はじまりました。

ジャスミンとアーモンドが香るなめらかなブランマンジェに、
みずみずしい呉羽梨のコンポートを重ねました。
ほんのり香るジャスミンジュレと、底に忍ばせたキャラメルソースが
梨の澄んだ甘さを引き立ててくれます。

ひと口ごとに広がる、やわらかな香りと透明感のある甘み。
まだ暑さの残る初秋に、そっと寄り添うような一品です。

新豆入荷|エチオピア ゲシャ カルマチ ナチュラル

エチオピア ゲシャ カルマチ ナチュラル(浅煎)

夏の輝きがゆるやかに陰り、秋の風が森を通り抜けるころ、
エチオピアから特別な一杯が届きました。
その名は「ゲシャ カルマチ ナチュラル」。

ひと口ふくむと、グレープやストロベリー、カシス、林檎といった果実の光がいっせいに広がります。
レッドワインを思わせる華やかさに、ライムの爽やかな酸が寄り添い、
そこへアプリコットやキャラメルの柔らかな甘みが重なります。
ナチュラルプロセスならではの芳醇さに、スパイスの余韻が知的な奥行きを添える――
まるで一杯の中に幾重もの層を描くような、立体的な味わいです。

ゲシャ地区は、ゲイシャ種発祥の地として知られる特別な場所。
その森にほど近い「カルマチ農園」では、自然林の中で守られてきた原生種の苗を植え継ぎ、
標高1800〜1980mの地で丁寧に育てられています。
このロットは、Cup of Excellence 受賞歴を持つトラコン社が手がける誇り高き作品。
ただ甘やかに華やぐだけではなく、凛とした酸と複雑な香りを湛える一杯は、
飲む人の記憶に深く刻まれることでしょう。

──“森のゲシャ”と呼ぶにふさわしい、豊かで力強い風味。
この季節に出会うにふさわしい特別なコーヒーを、ぜひお楽しみください。


□Coffee Profile|詳細情報
エリア:ベンチ・マジ、ゲシャ地区
農園名:ゲシャ・カルマチ農園(トラコン・トレーディング社)
標高:1800-1980m
品種:原生品種(ゲシャ種ほか)
生産処理:ナチュラル